弁護士ドットコム株式会社 Creators’ blog

弁護士ドットコムがエンジニア・デザイナーのサービス開発事例やデザイン活動を発信する公式ブログです。

弁護士ドットコムクリエイターブログの軌跡と振り返り

弁護士ドットコム株式会社 Creators' Blog の運営開始から半年が経過しました。何を目指して、どのような運用をしていたか公開します。

記事の公開戦略やレビュー体制にも触れているので、技術ブログを立ち上げようとしている人の参考になれば幸いです。

技術ブログを立ち上げた理由

弁護士ドットコムでは社外に向けていろいろな情報を発信していますが、発信の方法は各部署ごとにさまざまで、ブログも乱立していました。例えば、2018 年から運営されて私も寄稿したとびだせ! 弁護士ドットコムや、SRE が運営しているSREブログなどです。

「とびだせ! 弁護士ドットコム」は、noteを利用したブログです。社内のクリエイターは誰でも発信でき、部署を問わず使えて便利だったのですが、noteの事故を契機に、社内利用が下火になってしまいました。

弁護士ドットコムでは、クリエイターの社外への貢献、社外への情報発信を推奨しています。しかし、社外に知見を公開しようとしても、気軽に使えるオフィシャルな場がない、というジレンマに陥っていました。

これらを解決するため、クリエイターのための全社ブログの立ち上げを目指しました。

これが 2021 年 11 月の決起会で使ったジャムボードです。

現状の課題とテックブログでやりたいこと

ブログのテーマ

ブログを公開する媒体には「はてなブログ for DevBlog」を選びました。すでに先達が道を切り開いており、圧倒的な知名度があり、カスタマイズ性が高いことが理由です。SEO やセキュリティが担保されており、運用コストが抑えられることも大きな決め手となりました。

記事内容の方針

記事の内容は、積極的な情報発信を推奨するため、遵守項目は少なくしています。カジュアルな技術広報としての基本方針に合っている内容なら、なんでも OK です。

# 基本方針

弁護士ドットコム株式会社のカジュアルな技術広報

社外に当社の技術的取り組みを知ってもらい、ポジティブな印象を持ってもらう。また社員の技術情報発信を強化し、社内外での活躍の場を広げる。

- そもそも会社名を知らない人に知ってもらう (ブランド認知の向上)
- 会社名は知っているという人に、ポジティブな印象を持ってもらう
  - (社名から受けるイメージと違い) 意外と技術力高いんだな

この目的にかなうサービス開発やデザイン活動の記事であればなんでもよい。

レビュー体制

ソフトウェア開発のコードレビューと同じように、公開前の記事をレビューする体制があったほうが質の高い記事が出せます。

そこで他社事例を調べSmart Campさんの記事を参考に GitLab 上でのレビューを行なっています。

弊社ではアプリのコード管理に GitLab を使っています。そのためクリエイターは全員 GitLab へのアクセス権を持ってます。

しかしレビューはちゃんとやるほど、レビュアー&レビュイーに時間がかかります。そこで編集長と委員長のレビューは必須ですが、その他のレビューは任意です。基本的に、技術的な正しさなどは本人の良識に任せています。

あくまで記事は個人に帰属しており、会社のブログに寄稿してもらうので個人の責任というスタンスです。

はじめての投稿や出戻りを防ぐために執筆前レビューもしています。これは記事のターゲットと記事の 3 文まとめを執筆前にもらって、Slack で壁打ちをして投稿しやすくするためです。

## 執筆前の観点
(執筆後にまとめてでもOK)

- 社会的規範を満たしているか
- 他社の不利益にならないか
- 狙うユーザー・コンテキストが説明できるか

## 執筆後の観点
- 技術的に間違いがないか
- オープンにしてよい技術情報か
- 誤字脱字がないか(チェックツール)
- 採用面談で話すことができるか
- 会社の機密情報が含まれていないか(画像も)
- 見出しはタイトルがh1(#)で、記事の内容はh2(##)~h5(#####)になっているか

定期的に記事を発信するために

ブログは記事が魂です。箱だけあっても意味がありません。

当初、毎月 2 記事公開の目標を掲げました。時期に沿って、執筆してくれる人を増やすためにやった施策を紹介します。

立ち上げ初期

最初は認知度が低いので、社内の MTG で耳にタコができるくらいブログのコンセプトを説明しました。ケーススタディも踏まえて書くことのメリットを訴求し、自分で書くイメージが持てることを目指します。ハードルを下げて、執筆してくる人を集める作戦です。

## OK

- ソフトウェア開発に関することや技術的な取り組みの投稿
  - 「みんなの法律相談をリニューアルしてリリースした話」などのリリース済みの機能のアーキテクチャや開発の投稿
  - 「Webアクセシビリティで心掛けている5つのポイント」などのデザインの投稿
  - 「業務でvue.js始めた話」など初心者向けの投稿
    - 技術的なレベルが高いことが必須ではない。入門レベルでも「初心者向け」というコンテキストが明示してあればよい
- テック or デザインカンファレンスでの発表レポート
- エンジニア or デザイナー文化の投稿
- 議論を生むかもしれないがポリシーがしっかりしている投稿
  - 「炎上しない」を目的にしてはいけない。それでは誰にも刺さらない記事になる。もちろん炎上を狙いは論外

## NG

- 違法行為・不正行為を奨励していると受け止められるおそれがあるもの
- 社外秘の情報
- 技術やデザインに関係ないもしくは技術色の薄い記事

そして書いてくれそうな人に DM で声をかけていきました。偉い人が書くと、同じ部署の人が心理的に書きやすくなるので巻き込むのが大切です。偉くない自分も 1 記事目を書きました。

3か月後~

このあたりから意欲のある人が一巡して、息切れしてきます。もちろん同じ人が書いてくれるのも嬉しいですが、負担が偏り続きません。

いろんな人が書くことで、多様な技術や会社の情報が紹介できます。その結果、部署を超えた新しい挑戦が生まれます。

強制にはしたくないので、あの手この手で記事を募集してます。

そして 2 記事公開を目指すなら、毎月 3 人以上集める必要があることを学習しました。数か月前に声をかけていても、予想外に業務が忙しくなったり、アクシデントが起こります。

うまくいった施策

下記がうまくいった施策です。

月ごとに、Spread sheetで書いてくれる人をまとめ

執筆タイミング、内容が被らないように可視化しています。もちろん飛び込みも OK で、数ヶ月先に書いてくれる人を集めるためです。2-3 か月後なら、書いてくれる人も多いです。

「ブログ期待」Slackスタンプ

Slack でよさそうなコメントにスタンプを押すと、運営チャンネルに通知されます。ネタが発掘され記事につながっています。

月1の編集会議

人事や他の部署と連携し、新しいアイデアを取り入れて PDCA を回しています。部署を超えて声がかけられて、記事につながっています。

失敗した施策

一方うまくいかなかった施策もありました。

Google Formで記事のネタを募集

気になる記事になりそうなネタと、それを書ける人を匿名で記載する Google Form を作成しました。

残念ながら何度も声をかけたのですが、2 件しか集まりませんでした。クリエイターはリモートワークをしている人も多く、まわりの人の仕事が見えづらくなっていると思われます。

半年でできた拡散戦略

もちろんバズることが目的ではないのですが、多くの人に読んでもらえるように記事を最大限アピールするのも運営の役割です。

短期だと、自然検索は期待できません。なので Twitter で話題になって、はてなブックマークのランキング入りを狙っています。

はてなブックマークでランキング入りすると、PV が 数倍増えて多くの人に読んでもらえます。

はてなブックマーク ホットエントリー入り

会社名の「弁護士」の Word が強すぎるのか、生活カテゴリに自動でアサインされることがあります。修正依頼を出すのですが、多少時間がかかります。カテゴリ違いだと、はてなブックマークでアクセスが伸びません。

そのため、基本午前中に公開しています。うまくいけば、午後はてなブックマークランキングにあがります。

成果

半年間の PV です。ページごとにドリルダウンすると特定の記事の公開した 2-3 日にアクセスが集中していることがよくわかります。

月間PV

記事ごとのPV

一番高いスパイクでもっとも見られている記事は、ゲストの人事の方が描いてくれた記事です。クリエイターは頑張らないといけませんね。

creators.bengo4.com

いくつか代表的な成果を紹介します。

はてなブックマークランキング

6 記事 / 16 記事がはてなブックマークランキング入りしました。

Twitterでの絡み

勉強会の取り組みを出版社が取り上げてくれました。

採用

クラウドサインで採用に来てくれた人が、ブログを読んでくれていました。じわじわ採用で効果が出ています。

これから

今のところ目標通り毎月 2 記事以上公開できていますが、綱渡りが続いています。安定的な記事の発信には程遠いです。

もっと多くの人を巻き込んで、運営が声をかけなくても記事を書くことが当たり前になる世界を目指します。

そしてありのままの弁護士ドットコム株式会社を発信していきたいです。