AIに便利なツールを作らせて仕事を少し楽にした話
こんにちは。クラウドサインでバックエンドエンジニアをやっている(𝕏@kunihikot)です。
最近はよく夜渡りになっていたり、ベーグルを焼いていたりしています。
はじめに
最近、チームでの開発において「新旧 API エンドポイントの動作比較」という面倒な作業が頻繁に発生していました。Postman でタブを切り替えながら目視で比較するのは時間がかかるし、ミスも起きやすい。そこで思ったのが「こんな定型作業、AI に自動化ツールを作ってもらえばいいのではないか」ということでした。
結果的に、Gemini 2.5 Pro Deep Research と Cursor を使って、数時間でかなり実用的な CLI ツールを完成させることができました。今回はその過程と、さらに Claude Code のカスタムスラッシュコマンドで日常の定型処理を効率化した話もお伝えします。
APIエンドポイント比較ツール
困りごと
クラウドサインでは現在、Revel フレームワーク脱却のための作業を進めています。その過程で新旧の API エンドポイントの動作を比較する作業が頻繁に発生していました。
従来の方法
- Postman で新旧のエンドポイントにそれぞれリクエストを送信
- タブを切り替えながら目視で比較
- レスポンスの差分を手動でチェック
- 時間がかかるうえにミスが発生しやすい。
これを何度も繰り返すうちに「もっと効率的にできないか」と考えるようになりました。
そこで思いついたのが「AI に自動化ツールを作ってもらう」という方法です。
Step 1: Gemini 2.5 Pro Deep Research でプロンプト生成
まず、Gemini 2.5 Pro Deep Research に以下のような要求を投げました。
go 言語を使って、新旧のエンドポイントに対して同じリクエストを送信して比較するというものを作りたいです。(旧 URL 例: https://cloudsign.jp/api/me 新 URL: https://cloudsign.jp/v2/api/me)
CLI 操作でなるべく tig のようにリッチなインタラクティブ UI が良いです。
ログイン状態などを再現したいので、Chrome の Developer ツールから copy as Curl などをして CLI 上にそれをペーストしてクッキーなどは取り扱いたいです。
テストするエンドポイント一覧は OpenAPI 仕様の yaml を読み込んで選択したくて、レスポンスの型なんかも yaml と合致しているか調べたいです。
Cursor に指示してこのツールを作り上げたいので、Cursor への指示としてプロンプトを生成してください。
すると、以下のような包括的なプロンプトを生成してくれました。
生成されたプロンプト(抜粋)
1. **プロジェクトの目的** Web API のバージョンアップに伴うリグレッションを防止するため、新旧のエンドポイントに同じリクエストを送信し、レスポンスの差分やスキーマ準拠をインタラクティブに確認できる CLI ツールを開発 2. **主要機能** - OpenAPI連携 - cURLコマンド入力 - リクエストの複製と送信 - インタラクティブなUI - レスポンス比較 - スキーマ検証 3. **推奨技術スタック**:Deep Researchによって調査された最適な技術スタックの提案 4. **実装ステップ**:ステップバイステップで進められる詳細な手順
Step 2: Cursor の Claude 4 Sonnet Agent モードで実装
生成されたプロンプトをそのまま Cursor(Claude 4 Sonnet Agentモード)に投入しました。
さすがに一回のやりとりで想定通りの動きにはなりませんでしたが、ビルドして動かして改善して欲しいところを指摘するということを繰り返すと良い感じのものができました。
完成したツールを使ってみた感想
出来上がったツールは想像以上に使いやすくて、以下のような機能が盛り込まれています。
- OpenAPI の YAMLファイルを読み込んで、エンドポイント一覧を自動で表示
- vim ライクな検索(
/
でエンドポイント検索) - Chrome Developer Tools で Copy as curl したものをそのまま貼り付けると、認証情報やヘッダも含めて自動設定
- local/staging/production など、起動時に環境を指定可能
- 新旧エンドポイントの差分を見やすく表示して、MR のコメントにそのまま貼れる形式で出力
- テスト用のランダムデータ生成(faker 利用)
- ファイルアップロードにも対応
実際に業務で使ってみると、これが思った以上に便利でした。リクエストを送信するまでの手順も簡単だし、見落としがちなヘッダの差分なんかもきちんと拾ってくれます。
今はこのツールで生成したレポートをマージリクエストに貼り付けてもらっています。
定型業務もスラッシュコマンドで自動化
API ツールでの成功体験を踏まえて、今度は普段の開発業務でよくやる定型作業も AI で効率化してみました。Claude Code にはカスタムスラッシュコマンドという機能があって、自分でよく使うプロンプトをコマンド化できます。
コマンド名は伏せますが 既存エンドポイントを別アプリに移植するコマンド を作り、これもチームでの開発に大いに役立てています。 8-9割ぐらい求めているコードが生成されるので、あとは細かい調整をするだけで済みます。
コマンドの中身については、一旦自動化したいものを自分で実装して「今回やったような実装を定型作業として自動化したいので◯◯というカスタムスラッシュコマンドを作成してください」
のようにお願いすれば必要なコマンドを生成してくれます。
コマンド実行で上手く実装が進まない場合は、何度か Claude Code とやりとりして修正した後に、その内容をカスタムスラッシュコマンドの内容に追記してもらうと良いでしょう。
AIにツールを作らせてみた感想
やってみて思ったこと
今回一番驚いたのはスピード感です。
Cursor に最初のプロンプトを投げてから実用的なツールができるまで、本当に数時間でした。同じものを自分でゼロから書くとしたら、ライブラリ調べるところから始めてもっと時間がかかったでしょう。
あと、ツール作成にあたって、自分ではコードを 1 行も書いていません。要求を整理して AI に伝えるのが上手くできれば、プログラミングの知識がそれほどなくても結構いいものが作れるでしょう。
チームメンバーが欲しいと考えた追加機能は、これもチームメンバーが AI を使ってコード生成してマージリクエストを投げてくれました。
こういう小さな困りごとや繰り返し作業は放置されがちですが、AI に任せてしまうのが正解でしょう。
これからやってみたいこと
今回作ったツールは完全にチームに定着したので、他にも「これ毎回やってるな……」という作業があれば、どんどん AI に自動化してもらおうと考えています。
あとは、 Dify の活用にも力をいれているところです。
おわりに
今回、面倒だった新旧 API 比較を AI でさくっと自動化できたのは、かなり満足度の高い体験でした。
「これ面倒だなあ」と感じる作業があったら、とりあえず AI に相談してみるのをおすすめします。考えているより簡単に、実用的なツールが手に入るかもしれません。