弁護士ドットコム株式会社では、2025年から国内新卒エンジニアの採用を始めました。
新卒採用といえば、そう、新卒研修ですね。当社でも、新卒入社のエンジニア5名に向けて研修を行いました。
私はHTML解体新書という本を出していたり、体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方 第2版のレビューに参加したりしている関係で、HTML/CSSの研修と、Webアプリケーションセキュリティの研修を担当することになりました。この記事では、HTML/CSS研修について資料を公開しつつ、研修を実施した際に考えたことなどをご紹介したいと思います。
研修資料
まずHTML/CSS研修の資料を公開します。実際に社内で研修に使用した資料は235ページありましたが、公開に際して以下を削除しています。
- 研修受講者のアンケート結果
- 社内Slackのスクリーンショット、プロダクトのソースコードといった内部情報
- 他社のプロダクトについて直接的な言及をしている箇所
- グループワークに関する部分
また、せっかくなので(?)末尾に会社紹介のスライドを追加しています。結果として、公開資料は222ページとなりました。
いかにして研修を組み立てたか
さて、ここからは研修を組み立てる際に考えたことを述べていきます。
研修の前提
まず、研修に 与えられた時間は2時間 です。そして、目的とゴールは以下のようなものでした。
新卒エンジニアが現場配属された際にスムーズに実践に移れるよう、HTMLの基礎的な知識・スキルを習得してもらう。 基本的なHTMLタグの意味と使い方を理解していることがゴール。
また、研修を受けていただく新卒メンバーに対し、事前に習熟度などのアンケートをとりました。結果、今回の新卒メンバーは全員にWebアプリケーション開発経験があり、HTMLの理解度についても 「完全にわかる」 「調べながらやればできる」 という回答が半々で、かなり自信があるようでした。
方向性をどうするか?
HTML研修の方向性としては、大きく2つが考えられました。1つは具体的なマークアップ方法を教える、いわゆる「タグ辞典」やリファレンスマニュアルのような内容を教えるという方向です。しかし今回は、以下のような状況がありました。
- 新卒メンバー全員に、すでにHTMLを触った経験がある
- この研修の後、各事業部で実務研修を行う予定があり、そこで実際にプロダクトのHTMLを見る機会がある
- 細かいマークアップのルールは各プロダクトごとに異なるが、新卒メンバーがどこに配属されるかはまだわからない
- 正式に配属された後も、いきなりHTMLをゼロから設計しろと言われることは考えられず、コンポーネントを組み合わせたり、既存のHTMLを修正したりする機会があるはず
細かいマークアップについて具体的に教えても、すでに知っている内容である可能性が高い上、実務でそのまま使えるわけでもありません。
そこで今回は、もう1つの方向性に舵を切ることにしました。基礎的な部分、根っことなる考え方などに重点をおくという方針です。これらは実務から学びとる機会が少なく、現場に配属されてからでは学びにくいため、ここでしっかり触れておいた方が良いと考えました。
今回の研修の方針
そんなことを思いながら、研修内容について以下のような方針を立てました。
- 本当に基本的な部分だけ話し、あとは学び方や質問の仕方を学んでもらう
- そもそも2時間でHTML/CSSをマスターするのは無理
- 目指す姿: 知らないことは自分で調べて学ぶことができ、怪しいことには疑問を持ち、周りの人に相談・質問できる
- 実際に社内であった事例などに触れ、具体的な話をする
- 社内レビューで指摘された問題の具体例や、外注で作成してもらったHTMLの問題点など
- インタラクティブな研修にする
- ただ聞くだけでは面白くない、記憶に定着しにくい
- 新卒メンバーにも発言してもらったりしながら、わいわい進めていきたい
資料の作成
方針が決まったら作るだけです。話したいことをまとめていたら、資料の量が大変なことになりました。研修実施前に削った部分もかなりありますが、それでもスライドが230枚を超える大作になりました。4月1日から本格的に資料作成をはじめ、4月4日にはほぼできていたので、この量のスライドを4日間で作ったことになります。
研修の実施
研修は4月7日に社内の会議室で実施しました。新卒メンバーはオフライン参加ですが、他のメンバーからも聴講したいという要望があったため、オフライン・オンラインのハイブリッドで開催しました。ボリューム的に2時間で終わるか若干の心配もありましたが、本番では特に問題なく、クイズやグループワークも実施した上で、ほぼぴったりの時間で終わらせることができました。
研修後のアンケートの結果はかなり良く、特に「満足度」という項目については、新卒メンバー全員が5段階評価で5点をつけてくださったとのことで、最高の評価をいただくことができました。自由回答の内容でも、「学びが非常に多かった」、「今後も継続的に学んでいきたい」といった感想をいただき、当初の狙いを達成することができたと感じています。
終わりに
受講してくださった新卒メンバーの皆様、おつかれさまでした。弁護士ドットコム株式会社では、今後も引き続き、未来を担うエンジニアの皆様の成長をサポートしていきたいと思っています。この研修が、多少なりとも社内外の皆様の参考になれば幸いです。