弁護士ドットコム株式会社 Creators’ blog

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Camundaを使った業務フロー作成のすすめ

この記事は、弁護士ドットコム Advent Calendar 2025 の9日目の記事です。

※免責事項: 本記事は筆者個人の感想・見解に基づくものであり、弁護士ドットコム株式会社としての公式見解ではありません。

はじめまして。弁護士ドットコム株式会社で『クラウドサイン』という契約マネジメントプラットフォームのカスタマーサクセスを担当している枝元と申します。
私が所属しているカスタマーサクセス部では、顧客の円滑なクラウドサイン利用開始に向けた支援として、顧客の現行業務フローの整理や、クラウドサイン導入後の業務フローの作成を行っています。
この記事では、業務フロー可視化の手法であるBPMN(Business Process Model and Notation)と、業務フロー作成時においてよく使用するツールの「Camunda」について紹介します。

対象読者

以下のような方を想定しています。

もしかすると、業務フローを書き慣れている方には物足りない内容かもしれませんが、ご容赦ください。

  • 業務改善やDX担当になったが、何をすれば良いのか分からない方
  • システム刷新などを予定している企業の方
  • 自部署・部門の業務のどこに課題があるか分からずに悩んでいる方

そもそも何故業務フローを書くのか

業務フローという言葉に対して、正直以下のような印象を持たれている方もいるのではないでしょうか。

「面倒くさそう」 「複雑でよくわからない」 「読み方が難しい」 「ベンダーやコンサルが書くものでしょ?」 「綺麗に作るのが大変」 「Excel/PowerPonitで作ったフローの修正が大変」

しかし、業務フローを作成する目的は、単に「綺麗な作図をすること」ではありません。
「現場で何が行われているのか、誰が見ても分かる共通認識」を作る作業です。
業務フローを書くことにより、以下のようなメリットが期待出来ます。

①業務を可視化出来る

多くの現場では、担当者ごとに業務の進め方が異なり、「誰がどのタイミングで何をしているのか」が担当者の頭の中にしかないケースが存在します。
業務フローを書くことにより、業務の流れが可視化され、担当者ごとの業務のバラツキをなくす・新人への教育を早期化出来るなどのメリットがあります。

②関係者間の認識を揃えることが出来る

1点目と似ていますが、現場の担当者間だけで無く、他部署や社外の人との認識合わせるにも利用できます。
特に、新規システムの導入や、業務改善プロジェクトなどにおいては多くのステークホルダーが存在するケースも多く、業務フローを作成することで相互の認識を合わせることが出来ます。

③改善ポイントを明確にすることが出来る

これが一番個人的には重要だと考えていますが、実際にフローを書いてみると、「ここは無駄な手順では?」「この作業は自動化できるのでは?」など、改善の余地がある箇所が客観的かつ明確に見えるようになります。
特にDXやAXなどを推進する場合、否が応でも現在の業務を把握する必要があります(逆に、把握しなければ効果が出ないと言い換えても良いかもしれません)
その際に業務フローを作成することで、効率的に検討ポイントを抽出することが出来ます。

一方でデメリットも当然存在します。
個人的に一番のデメリットは「作成に時間/工数がかかる」ことです。
業務はこれまでの現場の方の工夫や、さまざまな経緯により手順が決まっています。
その内容をドキュメントにしていくには、関係者へのヒアリングや実際の業務をフローに起こす等、手間と労力がかかる割にすぐに効果が出ないことに時間を使う必要があります。
そのため、各現場ではシステム導入の際などに頑張って一度は書くものの、それ以降業務のアップデートに対応出来ず業務フローが古くなる...という光景がよく見られます。

そこで、少しでもこの業務フローを少ない負荷で作成する方法として、「業務フローを書ける/読める人が多い方法で記載する」という方法があります。
そこで活用できるのがBPMNという業務フローの記法です。

BPMNとは

BPMN (Business Process Modeling Notation) とは、業務プロセスを「共通言語」で表現するための国際標準の記法です。
国際標準の記法であることから、「誰が見ても同じ解釈ができる業務フロー」を作成するのに非常に適しており、例えばITベンダーと現場ユーザー、コンサルタントなど立場の違う人同士のギャップを埋めるために活用することが出来ます。
参考:公式リファレンス

また、本来はBPMSというシステムにBPMNで作成した業務フローを直接食わせることでタスク管理システムを作ることも可能ですが、今回は割愛いたします。

BPMNを使うメリット

BPMNを使うメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 現場担当とベンダー、コンサルタント、エンジニアが同じ図で会話できる

  • 業務の抜け漏れを防げる

  • API連携やシステム導入の検討がスムーズに進められる

  • 他部署・他メンバーへの引き継ぎ資料としても使いやすい

  • CI/CD、RPA、ワークフロー整備とも相性が良い

最近(というほど最近ではないですが)では、国から地方公共団体に向けた資料でシステム導入における業務フロー作成の標準としてBPMNが掲載されているケースもあります。
デジタル庁:地方公共団体の基幹業務システムの標準仕様における業務フローについて

・BPMNは、業務フローをモデル化し、視覚的に表記する方法を標準化した仕様のこと。
・「ビジネスモデル記法の国際標準」「業務担当者でも容易に理解可能」「ツールの充実により作成労力の抑制が可能」「目的に応じて表記の粒度を分けることが可能」「システム開発工程との連続性確保が可能」といった特徴がある。

J-LIS:地方公共団体の情報システム調達における機能要件の表記方法 利用ガイド

BPMN とは、業務フローをモデル化し、視覚的に表記する方法を標準化した仕様のことである。
「ビジネスモデル記法の国際標準」「業務担当者でも容易に理解可能」「ツールの充実により作成労力の抑制が可能」「目的に応じて表記の粒度を分けることが可能」「システム開発工程との連続性確保が可能」といった特徴があり、地方公共団体における活用の有効性にも注目が集まっている。

そして、今回BPMNを書くために紹介するのがCamunda Modelerというツールです。

Camunda Modelerとは

Camunda Modeler(以後、Camunda)とはBPMNを書くためのオープンソースツールです。
業務フロー(BPMN)を作成可能なツールはいくつか存在しますが、Camundaの特徴として、以下の点が挙げられます。

  • 操作がシンプルかつ表現力が高く、非エンジニアにも扱いやすい(現場での利用に適している)

  • タスクとタスクを繋ぐ線も自動でサジェストが行われる

  • 記法ミスに対してLintが効く(ツールが問題点を指摘してくれる)

  • オープンソースのため、基本無償で利用可能

このようなメリットがあるため、クラウドサイン事業部ではCamundaの活用を開始しています。
参考:公式リファレンス

BPMNの基本要素

BPMNでは、複数の要素を組み合わせて業務フローを表現していきます。
今回は、実務で特によく使う主要な要素を紹介します。

①イベント(丸型)

プロセス(フロー)の開始や終了、外部からの通知などを表現するのに利用する丸い要素です。
必要に応じて、イベントの下にテキストで開始条件を記載します。

開始イベント(Start Event)

Camundaの丸型の開始イベントアイコン
開始イベント

プロセスの開始を表す要素です。
原則、必ず開始イベントからプロセスは開始します。

使用場面例)

  • ユーザーが問い合わせフォームを送信した

  • 担当者が申請書を提出した

  • ある時刻になった

中間イベント(Intermediate Event)

Camundaの二重丸の中間イベントアイコン
中間イベント

プロセスの途中で、ある条件を満たしたら次に進むことを表す際に利用します。
業務フローを書く中では必須ではありませんが、使用することで「どこで業務が止まっているのか」を表現することが可能となるため、ボトルネック工程を特定するのに役立ちます。
(今回の記事では説明しませんが、Camundaでは様々な種類の中間イベントが存在し、それぞれ挙動が異なりますので、ご興味のある方は調べてみてください)

使用場面例)

  • 通知が来るまで待機

  • メールを受信するまで待機

  • ステータスが変わるまで待機

終了イベント(End Event)

Camundaの終了イベントアイコン
終了イベント

このプロセスがどこで終わるのかを表現する際に利用します。
必ず終了イベントを以てプロセスは終了します。
見た目は開始イベントにそっくりですが、ちょっと縁が太いのが特徴です。

使用場面例)

  • システムのステータスを「終了」に変更した

  • 振り込みを確認した

  • チケットがクローズされた

② アクティビティ(四角形)

Camundaの四角形のアクティビティアイコン
アクティビティ
アクティビティは、業務フロー内でもっとも頻繁に使用する四角の要素です。
具体的なアクションを表す際に利用します。
使用する際には、アクティビティの中に該当するアクションを記載します。

使用場面例)

  • メールを送信する

  • 書類を作成する

  • システムへ登録する

なお、アクティビティの粒度感は非常に悩ましいのですが、作成する業務フローの全体像や特性を見て記載するのがおすすめです。

③ ゲートウェイ(ひし形)

ゲートウェイは、業務の条件分岐・並列などを表すひし形の要素です。

排他ゲートウェイ(XOR)

Camundaの排他ゲートウェイアイコン
排他ゲートウェイ

YES / NO のどちらかで分岐する際に使用する要素です。
条件により、対応が変わる際に利用します。
ひし形の中にXが書かれているのが特徴です。

使用場面例)

  • 承認された場合/されなかった場合

  • 有償サポート契約ありの場合/有償サポート契約なしの場合

  • 正常に処理が終了したら/エラーが発生したら

  • 受注できたら/失注したら

並列ゲートウェイ(AND)

Camundaの並列ゲートウェイアイコン
並列ゲートウェイ

前のアクションの結果、複数の作業が並行して発生する場合などに使用する要素です。
それぞれの作業ごとで分岐する際などに利用されます。
ひし形の中に、十が書かれているのが特徴です。

使用場面例)

  • 承認されると、通知とシステムへの登録が実施される

  • 作業が完了すると、ステータス変更と報告書雛形が生成される

  • 注文が入ると、振り込み確認と商品手配を行う

包括ゲートウェイ(OR)

Camundaの包括ゲートウェイアイコン
包括ゲートウェイ

前述の2種類のゲートウェイでは、いずれか1つか、すべての分岐しか対応ができません。
そのため、「ある条件を満たす全てに進む」ということを表せるのが包括ゲートウェイです。
ひし形の中に、丸が書かれているのが特徴です。

使用場面例)

  • 受注金額が5,000,000円以上/10,000,000円以上の場合

  • 注文がりんご/みかん/両方 の場合

  • 注文商品にガラス/PC/お酒 が含まれる場合

④ スイムレーン(プール・レーン)

突然水泳教室みたいなことを言いだしましたが、BPMNでは「誰が」の境目を表すためにプールとレーンという要素を使用します。

プール

Camundaのプール要素
プール
組織・企業・システムなどの大きな枠を表します。
プールの単位は、基本的に1つで構成され、社外などとの関係が出る場合は新しいプールを用意します。

使用場面例)

  • A社

  • 本部

  • 顧客

レーン

Camundaのレーン要素
レーン
プールの中で、組織や役割などが分かれる際に利用します。
プールを分割したそれぞれをレーンと呼びます。
あくまで同一プール内での役割分担を表します。

使用場面例)

  • 経理と営業

  • AさんとBさん

  • 上司と部下

⑤その他よく使うのも

上記以外でよく使う要素としては、以下が挙げられます。

シーケンスフロー

Camundaの矢印型のシーケンスフローアイコン
シーケンスフロー

各要素を繋ぐための矢印です。
業務の流れや、どのタスクからどのタスクに繋がるのかの関係性を表します。

メッセージフロー

Camundaの点線矢印のメッセージフローアイコン
メッセージフロー

プールを跨ぐやりとりの際に使用する点線の矢印です。
メッセージや情報の送受信を表しますが、業務プロセスそのものには影響しないというのが特徴です。
(BPMNの考え方として、原則プロセスはプール内で完結している必要があります)

画像は少々分かりにくいですが、下から上に伸びている矢印がメッセージフローです。

コメント

Camundaの各種要素に付与できるコメント要素
コメント
要素にコメントを付与できます。
アクティビティで表しきれないものや、フローに書くと煩雑になる内容を記載します。

CamundaでBPMNを書く際のポイント

ここからは、前述の要素を使用してBPMNをどう書くのかを説明していきます。
(なお、BPMNの書き方に関しては実は色々な流派があるため、参考としてご覧ください)

抑えるべきポイント

最低限、業務フローを書く際に抑えた方が良いポイントを紹介します。

①開始イベント・終了イベントを明記する

プロセスを書く際は、途中からであっても最初に必ずプールごとに開始イベント・終了イベントを記載する必要があります。
(プロセスは常に開始イベントから始まり、終了イベントで終わる必要があります)
非推奨例

Camundaでプール内に開始イベントが存在しない非推奨例
開始イベントが存在しない例

推奨例

Camundaでプール内に開始イベントが存在する推奨例
開始イベントが存在する例

②レーン内は一筆書きで要素を繋ぐ

開始イベントから、終了イベントまではシーケンスフローなどで途切れないように繋ぐ必要があります。
また、基本的にプロセスは左から右に繋ぐ必要性があります。
(プールを跨ぐ、メッセージフローは除く)
非推奨例

Camundaでプール内でプロセスが途切れてしまっている非推奨例
プール内で途切れてしまっている例

推奨例

Camundaでプール内でプロセスが途切れず一続きになっている推奨例
プール内で途切れず一続きになっている例

③コメントを活用する

プロセスを記載していくと、すべての条件分岐の網羅が難しい・記載すると読みにくくなるケースなどが存在します。
その際は、コメントに注釈などで記載することで、適切な見やすさを保ちつつ業務を表現出来ます。

具体的な使い方

今回は、ある企業の受注〜請求までのプロセスの簡易的な業務フローを書いてみます。

①Camundaをインストールする(未インストールの場合)

初回のみ、以下のサイトから、使用しているOSに対応したCamundaのパッケージをダウンロードします。

公式ダウンロードサイト

ダウンロード後、適切なフォルダに展開します。

②Camundaを開く

早速①でインストールしたCamundaを開きます。
開くと以下のような画面が表示されるので、「BPMN diagram」を選択します。

Camundaを起動した際に表示されるトップ画面
Camundaのトップ画面

すると、以下のような画面が表示されるので、ここから業務フローを書いていきます。

Camundaで業務フローを記載する際の初期画面
初期画面

③プール・レーンを用意する

まず、メインとなるプールを用意します。
必要に応じて、複数個配置しても大丈夫です。
左側のアイコンから、プールを選択して配置します。
開始イベントがデフォルトで1つ配置されているので、そこを含めるように配置するのがおすすめです。
(なお、特にルーラーなどは存在しないため、見やすい形で配置すれば大丈夫です)

Camundaでプールと開始イベントだけを配置した画面
プールと開始イベントを配置

配置をしたら、左側に文字を書けるエリアがあるので、プールの対象になる自社名や組織名を記入します。
(文字を記載できるエリアをダブルクリックすると、文字の入力が可能となります)
加えて、右側のアイコンからプールを分割してレーンを作成出来るので、必要な役割分だけレーンを作成し、左側のエリアに名前を記載します。
例えば、「サンプルA社」の営業部と経理部が登場する場合、以下のような記載になります。

Camundaでプール内に営業部と経理部をレーン分けした画像
営業部と経理部をレーン分けして配置

また、顧客は別の企業になるため、プールを1つ追加し名前を付与します。

Camundaで別プールでサンプルB社を追加した画像
サンプルB社を別プールで追加

④各要素を追加していく

プール・レーンの用意が完了したら要素を追加していきます。
最初に、この業務フローが開始となるレーンの開始イベントに開始条件を記載します。
(今回は、商談アポ獲得から開始することとします)

Camundaで開始イベント直下に「商談アポ獲得」の文言を付与した画像
開始イベント直下に「商談アポ獲得」を追加

次に、各作業のアクティビティ・ゲートウェイ・シーケンスフロー・メッセージフロー、各プールの最後に終了イベントを配置していきます。
どのようなタスクがあるかをヒアリング結果などから確認し、配置していきます。
(一つ一つ配置の説明を行うと長くなるため、割愛いたします)

Camundaでアクティビティ等の要素を配置したフローの画像
アクティビティ等の各要素を追加したフロー

各要素の配置が完了したら、補足が必要な箇所にコメントを付与していきます。
コメントの付与が終われば完成です。
(慣れてくると、今回作成したフローは30分もかからずに作成出来るようになります)

Camundaでアクティビティ等にコメントを付与して完成したフロー画像
コメント等を付与して完成したフロー

⑤業務改善・業務設計に取り組む

ここまでで作成した業務フローを元に、どこの業務改善に取り組むのか・業務をどのように変えていくべきなのかを検討します。
必要に応じて、更にアクティビティごとに掘り下げた業務フローを作成して、対象とする業務を決めていきます。
取り組む際のポイントとしては、お作法的なところもありますが以下のような観点で検討いただくのが推奨されています。

  • アクティビティの数が少なくなる方法を検討する

  • プールやレーンを跨ぐ回数が少なくなる方法を検討する

まとめ

この記事では、以下の内容について紹介してきました。

  • 業務フローを書く理由・メリット

  • 業務フロー記法のBPMN

  • BPMNに沿った業務フロー作成ツール「Camunda」の使い方

業務フローはそれを書くこと自体が目的ではなく、あくまで業務改善などの成果を実現するために、「現場で何が行われているのか、誰が見ても分かる共通認識」を作る工程の一部にすぎません。
業務フローを作成した上で、そこからどのように業務を変えていくのか(無くしていくのか)が重要ですので、その意識を忘れずに是非業務フロー作成に取り組んでいただけると幸いです。
カスタマーサクセス部でも「顧客の成果に繋げる」ことを意識しながら、これからも顧客の一助となるべく分かりやすい業務フローを書いていきたいと考えています。

また、カスタマーサクセス部では現在一緒に顧客の成果に貢献していきたい仲間を絶賛募集しています。
この記事を見て少しでも興味を持っていただける方がいらっしゃいましたら是非気軽に応募していただけますと幸いです。