弁護士ドットコム株式会社 Creators’ blog

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エンジニア組織での生成AI導入と活用の3つのポイント

はじめに

「AI is one of the most profound things we’re working on as humanity. It’s more profound than fire or electricity.」( AI は人類が取り組んでいる中でもっとも深遠なものの1つである。それは火や電気よりも深遠である。) Google CEO Sundar Pichai 氏

こんにちは、クラウドサインのエンジニアリングマネージャー戸田です。

AI の進化は私たちエンジニア組織の現場に大きな変化をもたらしています。コード生成、ドキュメント作成、仕様の整理など、従来の作業が劇的に効率化されつつあり、大きな変革期にいると日々強く感じています。

現在クラウドサインではエンジニアだけではなく、デザイナーや PdM も生成AI が利用できる状況となり活用の幅が広がりつつあります。 この記事では、そんなクラウドサインのエンジニアリングマネージャーの立場から 「エンジニア組織での生成AI導入と活用」 について、私たちの取り組みや考え方を交えながら 3つのポイント についてお話ししてみます。

小さく始める

生成AI を組織に導入する際、私たちの組織が採用したのは「小さく始める」でした。これは、最初から大規模な投資や全社展開を目指すのではなく、段階的に生成AI の活用を進めることで、リスクを抑えつつ最大の効果を引き出すための戦略的なアプローチです。Google CEO の Sundar Pichai 氏が AI の深遠さを語るように、この新たな技術は計り知れない可能性を秘めていますが、同時に未知の課題も多く存在します。そのため、慎重かつ柔軟な導入プロセスが不可欠だったと考えています。

導入における課題と懸念

いきなり全社で生成AI を導入しようとすると、さまざまな課題に直面する可能性があります。例えば、新しいツールへの適応に戸惑ったり、既存のワークフローとの摩擦が生じたりすることが考えられます。また生成AI の出力の信頼性やセキュリティに関する懸念、さらに、投資に見合う効果が得られるかどうかの不確実性も大きな障壁となります。 AI 技術は飛躍的に進化しており、選択したツールや仕組みが、すぐに陳腐化するリスクも無視できません。

スモールスタートと選択肢の提供

私たちの組織では、まず少人数での試行から始めました。希望者を募り、小規模なチームで生成AI を試用することで、具体的なユースケースや効果的な活用方法に関する知見が蓄積されました。このスモールスタートによって得られたノウハウは、その後のエンジニア組織全体、さらにはデザイナーや PdM への適用範囲拡大において有効だったと思っています。

さらに重要なのは強制するのではなく「使いたい人が試せる」状態が提供されていることです。多種多様な 生成AI の中から、各々が試行錯誤できる環境になっています。これにより、メンバーは納得感を持ってツールを選択し、主体的に活用を進めることができます。現時点では、 Cursor や Claude Code の利用が多いですね。

例:利用可能な生成AIツール

  • Claude Code
  • Cursor
  • Cline
  • Kiro
  • Github Copilot AgentMode
  • CodeRabbit
  • Gemini/NotebookLM
  • Azure OpenAI Services

CTO 主導による生成AI導入の加速

生成AI の導入において、私たちの組織では CTO がその推進役を担っており、その恩恵は非常に大きいです。 CTO は生成AI の重要性を深く理解しているため、意思決定のスピードが非常に速いというメリットがあります。通常、このような大規模な技術導入は、複数階層での承認や多くの関係部署との調整に時間がかかりがちです。しかし、 CTO が直接的に導入を牽引することで、そうした障壁が最小限に抑えられていると感じています。

組織文化を形成する

生成AI を組織に導入する際、技術的な側面だけでなく、組織文化が成功の鍵を握ると考えています。Peter Drucker氏が「Culture eats strategy for breakfast.(文化は戦略を食う)」と述べたように、どれほど優れた導入計画を立てたとしても、それが組織の文化として根付かなければ絵に描いた餅となってしまいます。私の経験からも、この言葉の重みを日々実感しています。

導入における課題とマインドセット

生成AI の導入は、新たな挑戦であると同時に、潜在的な心理的障壁も生み出す可能性があります。例えば「AIを使うのはズルい」といった感情や、 生成AI の利用によって生じた失敗事例をオープンにしにくいといった状況は、健全な情報共有と学習の妨げとなります。また現状維持を好む傾向や、新たなツールやワークフローへの強い抵抗感も、導入を阻む大きな要因となり得ます。このようなネガティブなマインドセットや文化がチーム内に存在すると、 生成AI 活用の恩恵を十分に享受することは難しく、結果的に組織全体の生産性向上には繋がりません。

心理的安全性の確保と継続的な学習の場

さまざまな考え方がありますが、これらの課題に対し「最適解を一方的に押し付ける」アプローチは避けるべきだと考えています。代わりに重視するのは、心理的安全性の高い環境を築くことです。率直なフィードバックや、生成AI の活用でうまくいかなかった失敗談を含めた事例を安心して共有できる場を作っていくことで、誰もが恐れることなく新しい技術に挑戦し、そこから学びを得ることができます。

具体的には、生成AI 活用に関する定期的な情報交換会や、試行錯誤のプロセスを共有するカジュアルな場を設けることが有効です。これにより、成功体験だけでなく、失敗体験からも学び、チーム全体で生成AI との付き合い方を模索する文化を育むのではないでしょうか。安心して学び続けられる場があるからこそ、 AI は組織の力となり得ると考えます。

領域を越えてコラボレーションする

生成AI の活用は、単にエンジニアリングにおける設計やコーディングの効率化にとどまる話ではありません。 AI 時代の開発組織は、職種間の境界を越えたコラボレーションを促進し、プロダクト開発全体を革新するツールです。Stability AI の CEO、Emad Mostaque氏が「This is not about replacing people, it’s about augmenting them.(AIは人を置き換えるものではなく、人を拡張するものだ)」 と語るように、 AI はそれぞれの専門性を高め、連携を強化するための強力なツールとなります。

従来の壁とAIによる可能性

従来のプロダクト開発では、エンジニア・ PdM ・デザイナーといった職種間で、それぞれが持つ専門知識や担当領域の違いから、時には領域の「壁」がボトルネックになることがあります。しかし、生成AI はこれらの課題を乗り越える新たな手段を提供します。 PdM が生成AI を活用してユーザーインタビューの要約を効率化したり、コード解析を通じて仕様理解を深められます。デザイナーは画像生成ツールで迅速にプロトタイプを作成し、エンジニアは生成AI の力を借りて PRD(Product Requirements Document)やデザインのドラフト版を作成できるようになります。これにより、それぞれの専門領域の垣根を越え、よりスムーズで深い情報共有と協働を実現できるのではないでしょうか。

プロダクト開発全体への貢献

生成AI は「誰かの仕事を楽にする」という視点だけでなく「どうすればプロダクト開発全体をより良くできるか」という観点で捉えるべきでしょう。職種間の連携を強化し、共通の理解を深めることで、プロダクト価値の最大化に繋げていきたいですね。

最後に

生成AI は開発組織が既存の枠組みにとらわれず、未来志向で進化していくための強力な触媒です。この変革期において皆さんの組織が生成AI をどのように活用し、どのような工夫や悩みを抱えているか、ぜひ意見を交換し共に学びを深めていければ幸いです。