弁護士ドットコム株式会社 Creators’ blog

弁護士ドットコムがエンジニア・デザイナーのサービス開発事例やデザイン活動を発信する公式ブログです。

デザイナーが組織・人材マネジメントに関わるようになって読んだ本

はじめまして。 弁護士ドットコムの弁護士ドットコム事業本部デザイン部の内藤です。 2017年10月にプレイヤーとして入社して、マネジメントの知識がほとんどない状態からマネージャーになり、現在は部長をさせていただいております。

今回は、僕自身の振り返りも含めて、デザイナーがマネジメントを行う際に参考になる書籍をご紹介します。これからマネージャーになる方や、マネジメントに興味が湧いてきた、というデザイナーの方におすすめです。

まずはマネジメントの全体像を知る

まずはマネジメントとは一体なんなのかを知るために、全体像を掴める基本書を読みました。組織、人材マネジメントへの興味が深まった一冊でもあります。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメントと聞いて思い出すのはドラッカーという人も多いと思います。冒頭からデザインとの関係が薄い本の紹介になりますが、マネジメントを一通り体系的に学べます。

基本と原則に反するものは、例外なく破綻するという言葉があります。企業とは何か、事業は何か、事業の目標とは、のような存在意義に関わる部分から目標設定や管理などマネージャーの日々の役割まで基本的かつ根幹になるマネジメントへの向き合い方が書かれています。新しいマネジメント手法、組織論が次から次へと登場していますが、マネジメントの本質を見失わないように組織の指針を固めておきたいところです。

トップマネジメントやミドルマネジメントなどそれぞれの役割ですべきことも書かれています。自身の役割と上位の役割の違いを知り、視座を上げることで上長の言葉の理解を深めることもできました。

人は最大の資産である。人のマネジメントは人の強みを発揮させることである。という記述があります。 人材マネジメントでは、デザイナーが強みを持ち、発揮するにはどうしたらいいかに焦点を当てて考えるようになりました。強みを見つけたら、ひたすら伸ばす、弱点克服も良いですが、なかなか効果が出にくいので達成感や成長が感じにくくなってしまいます。僕自身も20代は苦手克服に費やしましたが、今思えばもっと早く、得意領域、強みのある領域を伸ばすことに注力すべきだったと考えています。個々のメンバーと向き合い、大切にしている価値観やモチベーションの源泉を共有しながら、一緒に強みを活かしたキャリアを考えるようになりました。

デザイン組織の事例を知る

僕自身がインハウスでデザイナーをしているため、全体像を掴んでからインハウスの身近な事例の書籍を読んでみました。

デザイン組織のつくりかた デザイン思考を駆動させるインハウスチームの構築&運用ガイド

やっとデザインというワードが出てきました。インハウスのデザイン組織に特化したレアな書籍です。デザインという言葉の定義が曖昧になる中、広義な意味でのデザインを組織で発揮することでどんな影響があるかなど興味深いテーマが詰まっています。

この本には集権的パートナーシップという章があります。 いわゆる縦軸組織(事業部付けでデザイナーが配属される組織)、横軸組織(デザイナーをはじめ職能ごとの組織)のメリット・デメリットにも触れられています。その両モデルのいいとこどりをした組織のアイディアです。 事業のフェーズに合わせて進化するデザイン組織についても触れていて、自分の関わる事業はどんなフェーズでデザイン組織はどうあるべきかを考える際にも非常に参考になっています。

弁護士ドットコムではマトリクス組織を採用しており、縦軸へコミットしつつ、横軸で自発的な社内の課題解決をおこなっています。縦横の協力関係が築けていますが、組織の型はまた進化していくと思っています。

役割とチームの構成という章では、組織拡大のフェーズごとにデザイナーに求められる役割や能力、チームの変化について書かれています。細分化したデザイナーの役割、例えばプロダクトデザイナー、コミュニケーションデザイナー、コンテンツストラテジストなどの定義も書かれているので、マネージャーに限らず、デザイナーとしてのキャリアパス、働き方の知見を深めたい方にもおすすめです。

隣接する開発組織への理解を深める

デザイン組織は開発組織と連携することが多く、最適な型を模索するために参考になる書籍を探していたときに出会ったのがこちらです。

エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング

インハウスのアジャイル開発に関する具体的な思考方法から組織論まで幅広く網羅されています。タイトル通りでエンジニア向けの言葉が多いのですが、チームで開発を共にしているデザイナーには馴染みがあると思います。一方で、開発のことをもっと知ってマネジメントに活かしたいというデザイナーにはうってつけの書籍でもあります。

いかにして不確実性を管理するかという記述があります。 チーム、組織として不確実性とどう向き合うべきかが書かれています。スケジュールや意思決定、不安などアジャイルな開発現場での不確実性と解決にむけた発想を知ることで、エンジニアの考え方を考慮しながら組織マネジメントに向き合うことができます。

弁護士ドットコムのデザイナーはエンジニアが一緒のチームになっていることが多く、共創の体制ができています。コラボレーションによる自発的な社内ツール開発など、隣接組織との相互理解が深まり、関係性が良くなると予想を超える課題解決策が生まれます。

周辺組織への理解を深める

マネージャーになるとマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど関わる部門、職種も増えてきます。他職種に関する知識を身につけておかないと話についていけないこともあります。世の中のデザインマネージャーも周辺組織の知識を身につけている方が多い印象がありました。そんな時に出会った本です。

THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

最近では社内の営業部門がマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなどに分かれているケースが多いと思います。営業プロセスを各部門に分けることで組織、担当者の役割を明確にして標準化を狙っています。分業体制になった各部門の役割を知ることで、デザイナーとしてどう関わるべきかを検討できます。デザイン部では昨年までデザイナー不在部署、チームのサポートを行う業務を定義して、時に施策の検討から参画し、目標達成に貢献しました。今後はさらに一体感をもった組織編成になっていきます。

大切なのはデータを鵜呑みにせず、数字から今何が起きているかを想像する力だという記述があります。 事業の目標達成に向けて、一つのデータをとっても売上、リード、エンゲージメント、ユーザー体験など職種ごとに「何を見るか」の違いがあります。同じ施策でも、デザイナーはユーザーに提供すべき体験を定性目標に設定し、マーケターはリード獲得を通してユーザーとの接点を獲得する定量目標を持っていたりします。

各職種で何を軸にその数字を見ているかを明確にしてコミュニケーションがとれれば、対立することなく、複数の視点で改善策を生み出せると考えています。そのためには協業して同じゴールを目指せるように定量、定性でバランスよい目標やKPI設計が必要になります。

一方で、社内の公平性を保つことが最優先になると、ユーザーを考慮できない組織になりかねません。そうならないように、視野の中心には必ずユーザーがいるようにしなければなりません。

この本に出てくる以外にもコンテンツ制作チームや事業戦略チームたくさんの職種が存在します。他職種とのつながりを増やし、理解しながら事業貢献の幅を広げていきたいと考えています。

最後に

僕がマネジメントに関わるにあたって個人的に役に立った書籍を一部ご紹介させていただきました。全然ご紹介しきれなかったので、できればまた記事にしたいと思っています。

組織マネジメントに関しては、様々な組織の型がありますが、流行に流されずに自組織の事業フェーズと照らし合わせて現状把握することで最適な型が見えてくるはずです。 加えて、組織はそれを構成する人がもっとも重要だと考えているので、人材マネジメントの比重を増やし業務に取り組んでいます。僕自身、マネジメントに関わるようになってからは特に自己の成長よりも他者の成長に大きく比重が移りました。

今後も組織や個々の成長、マネジメントの変化、目指すべき方向性など、マネジメントについて書いてみたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。